生産国別の詳細分析

世界の銀生産は地理的に集中しており、上位3カ国(メキシコ、中国、ペルー)で世界生産の約半分を占めています。本セクションでは、主要生産国の生産動向、特徴、課題について詳しく分析します。

概要

2024年の世界銀生産量は約25,000トン(一部推計では23,300トン)となり、前年比でわずかに減少しました。しかし、メキシコのPeñasquito鉱山の稼働正常化などにより、2025年には1.9%の増産が見込まれています。 [1]

主要生産国ランキング(2024年)

順位

国名

生産量

世界シェア

1

メキシコ

6,300トン

約25%

2

中国

3,400トン

約14%

3

ペルー

3,100トン

約12%

4

チリ

1,400トン

約6%

5

ポーランド

1,300トン

約5%

メキシコ(世界最大)

生産実績

  • 2024年生産量:約6,300トン(世界シェア:約25%) [2]

  • 特徴:16年連続で世界最大の銀生産国

  • 2024年の変化:前年比で380万オンス(約108トン)増産

メキシコの生産量は第2位の中国の約2倍に達し、圧倒的な世界首位を維持しています。

主要企業:Fresnillo社

Fresnillo plcは世界最大の銀生産会社です:

  • 2024年生産量:56.3百万オンス(約1,596トン) [3]

  • 主要鉱山

    • Juanicipio鉱山:18.57百万オンス(Fresnillo 56%、MAG Silver 44%のJV)

    • Saucito鉱山:14.47百万オンス [4]

    • San Julian鉱山:11.83百万オンス

    • Fresnillo鉱山:10.24百万オンス [5]

すべての鉱山がメキシコ国内に位置しており、メキシコの銀生産における中核的役割を担っています。

Peñasquito鉱山の回復

Newmont社のPeñasquito鉱山は世界第2位の銀鉱山です:

  • 2024年生産量:33百万オンス(約935.5トン) [6] [7]

  • 2023年の課題:労働争議により生産が停滞

  • 2024年の回復:フル稼働に復帰し、メキシコ全体の増産に大きく貢献

  • 2025年見通し:28百万オンス以上の生産を予定

この鉱山の回復が、2024年のメキシコ増産の主要因となりました。

課題と展望

  • 過去の減産:過去2年間で約25%の生産減少を経験

  • 回復途上:Peñasquito鉱山の正常化により回復基調

  • 2025年の展望:JuanicipioおよびTerronera鉱山プロジェクトが増産の主要ドライバーとなる見込み

中国(第2位)

生産実績

  • 2024年生産量:約3,400トン(世界シェア:約14%)

  • 2023年からの変化:3,400トン → 3,300トンへわずかに減少 [8]

特徴と課題

国内需要の強さ

  • 電子機器産業向けの需要

  • 太陽光発電産業向けの需要

  • 国内工業需要が強いため、輸出余力は限定的

生産減少の背景(Shanghai Metal Market分析):

  • 古い鉱山の鉱石品位低下

  • 埋蔵量の枯渇が長期的なトレンド

中国は世界第2位の生産国ですが、国内需要が強く、グローバル市場への供給余力は限られています。

ペルー(第3位)

生産実績

  • 2024年生産量:約3,100トン(世界シェア:約12%) [9]

  • 2023年からの変化:3,200トン → 3,100トンへ減少 [10] [11]

強みと課題

強み

  • 豊富な銀埋蔵量:世界第1位とされる埋蔵量

  • 安定した生産体制:長年にわたる鉱業インフラ

2024年の減産要因

  • 鉱石品位の低下

  • 社会的不安(social unrest)の影響

ペルーは豊富な埋蔵量を持ちながらも、社会的要因による生産への影響が懸念されています。

その他の主要生産国

チリ

  • 2024年生産量:約1,400トン(世界シェア:約6%)

  • 特徴:2024年に減産

  • 銅との副産物:主に銅鉱山からの副産物として生産

ポーランド

  • 2024年生産量:約1,300トン(世界シェア:約5%) [12]

  • 特徴:ヨーロッパ最大の銀生産国

  • 安定性:安定した生産を維持

ボリビア

  • 2024年生産量:約1,400トン

  • 特徴:成長中の生産国

  • 展望:今後の増産が期待される

オーストラリア

  • 特徴:鉛・亜鉛鉱山からの副産物として生産

  • トレンド:増産傾向

  • その他の主要生産:カザフスタンとともに重要な生産国

ロシア

  • トレンド:大幅増産の報告

  • データの透明性:詳細な統計データの入手が限定的

米国

  • トレンド:増産傾向

  • 特徴:主に他の金属鉱山からの副産物として生産

地域別生産の特徴

南北アメリカ大陸

メキシコ、ペルー、チリ、ボリビア、米国など、世界の銀生産の中心地です。特にメキシコとペルーが圧倒的なシェアを占めています。

特徴

  • 大規模な一次銀鉱山が多数存在

  • 成熟した鉱業インフラ

  • 豊富な埋蔵量

アジア

中国が最大の生産国ですが、国内需要が強く輸出余力は限定的です。

特徴

  • 国内工業需要が旺盛

  • 鉱石品位の低下が課題

  • 新規鉱山開発の余地は限定的

ヨーロッパ

ポーランドが中心的な生産国です。

特徴

  • 副産物としての生産が中心

  • 安定した生産体制

その他地域

オーストラリア、カザフスタンなどが重要な生産地域です。

特徴

  • 鉛・亜鉛鉱山からの副産物生産

  • 増産傾向

最新動向(2025年)

世界生産の見通し

2025年予測

  • 世界の鉱山供給量は前年比1.9%増加の見込み

  • メキシコが増産の主要ドライバー

メキシコの新規プロジェクト

2025年のメキシコ増産を牽引する主要プロジェクト:

  1. Juanicipio鉱山

    • Fresnillo(56%)とMAG Silver(44%)のJV

    • 2024年に18.57百万オンスを生産 [13]

    • さらなる増産が期待される

  2. Terronera鉱山

    • 新規プロジェクトとして増産に寄与

    • メキシコの生産拡大の鍵

  3. Peñasquito鉱山

    • 2025年に28百万オンス以上の生産を予定 [14]

    • 2024年の33百万オンスからはやや減少の見込み

長期的な課題

既存鉱山の品位低下

  • 中国:古い鉱山の埋蔵量枯渇

  • ペルー:鉱石品位の低下

社会的・地政学的リスク

  • ペルー:社会的不安による生産への影響

  • ロシア:地政学的リスクとデータの透明性

新規鉱山開発の必要性

  • 既存鉱山の品位低下を補うため、新規プロジェクトの開発が重要

  • メキシコのJuanicipioやTerronera鉱山が好例

まとめ

2025年の世界銀生産は、メキシコの新規プロジェクトに牽引されて微増が見込まれています。しかし、中国やペルーなどの主要生産国では鉱石品位の低下や社会的課題が顕在化しており、長期的な供給安定性には不確実性が残ります。今後の生産動向は、新規プロジェクトの進捗と既存鉱山の効率化にかかっています。

参考文献・データソース