代替・節約技術の動向

概要

銀の産業利用において、コスト削減と資源効率化の観点から代替・節約技術の開発が進められています。特に太陽光発電セクターでは顕著な技術進歩が見られる一方、その他のセクターでは銀の独自の特性により代替が困難な状況にあります。

太陽光パネルでの銀使用量削減

技術進歩と使用量削減

PV(太陽光発電)セクターでは、以下の点で顕著な技術進歩が見られています:

  • 銀ローディングの削減: パネル1枚あたりの銀使用量が大幅に削減

  • 学習効果: セル出力当たりの銀使用量は学習効果により継続的に低下

  • コスト削減: 質量比で1%に満たない銀が材料コストで大きな割合を占めており、削減が重要課題 [1]

使用量削減のジレンマ

技術進歩による単位あたりの使用量削減にもかかわらず、以下の要因により総使用量は増加しています:

要因

影響

パネル設置数の増加

世界的な太陽光発電需要の高まり

N型セルへの移行

TOPConやHJTセルの普及

市場規模の拡大

2025年には全世界の銀需要の14%を占める見込み(2014年は5%)

将来予測と課題

ニューサウスウェールズ大学の研究によると、2050年までに太陽光発電技術が世界の銀埋蔵量の85~98%を消費する可能性があり、イノベーションの緊急性が強調されています。

その他セクターでの代替

代替困難な理由

多くのセクターで代替・節約は限定的であり、その理由は以下の通りです:

  1. 優れた電気伝導性: 金属中で最高の電気伝導率

  2. 優れた熱伝導性: 効率的な熱管理が必要な用途で不可欠

  3. 抗菌性: 医療・衛生用途での独自の価値

  4. 信頼性: 長期的な性能と安定性

性能優先の選択

性能と信頼性の観点から、以下の分野では銀が選好され続けています:

  • 電子機器: 高性能コネクタ、スイッチ類

  • 医療機器: 抗菌コーティング、電極

  • 産業機器: 高信頼性接点、センサー

最新動向(2025年)

太陽光パネルの銀代替技術

2025年時点で、複数の代替技術が開発・実用化段階にあります:

1. 銅置換技術

基本的アプローチ

  • 銀とほぼ同等の導電性を持つ銅を使用

  • 製造コストを大幅に削減(銅は銀の約100分の1の価格)

実用化事例

  • 中国のAIKO社:全裏面接触(ABC)モジュールで銅を使用した相互接続を開始

  • Longi Green Energy社:電気めっき銅を費用効果の高い代替として試験中

課題

  • 銅は銀よりも酸化しやすい

  • 長期安定性と効率維持のため、特殊コーティングや処理が必要

  • 大量生産への準備段階

2. 銀被覆銅ペースト

技術概要

  • 銅粒子を銀でコーティングした複合材料

  • 銀消費量を30~50%削減可能 [2]

  • SHJソーラーセルでの5 mg/W目標達成への現実的な道筋

利点

  • 即座に銀消費量を削減可能

  • 既存製造プロセスとの互換性

3. 銅めっき技術

アプローチ

  • 主に銅を使用して金属接点を形成

  • 産業用シリコン太陽電池の銀低減金属化ソリューション

開発状況

  • 実験室レベルでは既に存在

  • 産業規模での展開を加速する必要性

4. テープソリューション技術

革新的アプローチ

  • 新型太陽電池ストリンガーマシンを使用

  • 銅線付き接着テープにより銀使用量を60%削減 [3]

  • 銀の必要性を完全に排除

5. ペロブスカイト太陽電池

技術的特徴

  • ペロブスカイト鉱物を使用した次世代太陽電池

  • 銀の必要性を最終的に排除する可能性

  • 直近10年間で変換効率が約1.5倍に向上

実用化の見通し

日本政府の戦略(2024年11月公表):

  • 経済産業省が「次世代型太陽電池戦略」を公表

  • 2025年中に本格的な市場投入が最短で実現

  • GI基金を活用した価格低減支援

    • 2025年目標: 20円/kWh

    • 2030年目標: 14円/kWh

  • 2040年までに約20 GWの導入目標

企業の動向

  • 2025年1月: 積水化学が「積水ソーラーフィルム株式会社」を設立

    • 2027年: 100MW規模の生産ライン稼働計画

    • 2030年: GW級の量産体制構築見通し

  • 国内外で量産体制を整える企業が増加

銀需要の見通し

2025年の予測

  • 太陽光発電向け銀需要が全世界の銀需要の14%を占める見込み

  • 2014年の5%から大幅に増加 [4]

  • N型セル(TOPCon、HJT)への移行により、単位あたりの使用量は増加傾向

長期的課題

  • 製造コストに占める銀の割合が増大

  • 太陽電池モジュール価格は低下を続けるが、銀価格は上昇傾向

  • 代替技術の早期実用化が産業の持続可能性に不可欠

まとめ

代替・節約技術は太陽光発電セクターで急速に進展しており、2025年は複数の革新的技術が実用化段階に入る転換点となっています。銅置換、銀被覆銅ペースト、ペロブスカイト太陽電池などの技術により、銀使用量の大幅削減または完全な代替が可能になりつつあります。

一方で、その他のセクターでは銀の独自の特性により代替が困難な状況が続いており、セクターごとに異なるアプローチが必要とされています。コスト削減と資源効率化の両立は、今後の技術開発における重要な課題であり続けるでしょう。

参考文献・データソース