工業需要の成長要因分析

本セクションでは、銀の工業需要における主要な成長ドライバーを分析します。特に太陽光パネル(PV)、電気自動車(EV)、およびその他の工業用途における需要動向に焦点を当てます。

太陽光パネル(PV)での需要拡大

圧倒的な成長

太陽光パネル産業における銀の需要は、過去10年間で劇的な成長を遂げています。

年度

銀需要量(トン)

世界需要シェア

備考

2015年

1,852トン

5%

-

2024年

約6,577トン

19%

約3.5倍増加

2025年(予測)

-

14%(想定)

成長鈍化の見込み

オンス換算での需要推移:

  • 2023年:193.5百万オンス [1]

  • 2024年:232百万オンス(前年比20%増、19%シェア) [2] [3]

    • メトリックトン換算:約6,577トン

    • 世界需要の19%を占める

  • 2025年予測:14%シェア(成長鈍化見込み)

技術的動向

銀ローディングの削減技術:

  • 従来型パネルでは銀使用量の削減技術が進展

  • しかし、TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)パネルの普及により、1枚あたりの銀使用量は50%増加

  • 絶対量ベースでは需要は引き続き増加傾向

米国市場の動向(2024年):

  • 約1.5億枚のパネルが設置

  • 銀の使用量:67百万オンス

世界的な太陽光発電容量の増加:

  • 2024年の世界太陽光発電容量追加:467GW

    • 2015年比で460%増加

    • 2024年は全新規電源の72%を太陽光が占める

  • 2025年の見通し:過去最高の設置量を達成見込み

    • トランプ政権の政策懸念にもかかわらず、グローバル市場は堅調

太陽光パネルの銀含有量:

  • 1枚あたり約20グラム(0.643オンス)の銀を含有

  • TOPConパネルは従来型より50%多い銀を使用

  • 2024年にTOPCon技術が200百万オンスの需要を創出

電気自動車(EV)での使用

車両あたりの銀使用量

電気自動車(BEV)は従来の内燃機関車と比較して、大幅に多くの銀を使用しています。

  • 1台あたり25〜50グラムの銀を使用

  • 従来の内燃機関車よりも高い銀使用量

主要な使用箇所

用途

説明

バッテリーパック

バッテリーと他のコンポーネント間の電気接続

バッテリーマネジメントシステム

高効率な電力制御を実現

パワーエレクトロニクス

電力変換・制御システム

充電インフラ

充電ステーションの電気接続部品

市場規模と成長予測

2025年の銀需要予測:

  • 自動車セクター全体:88-90百万オンス/年 [4]

  • EV製造:90百万オンスを超える見込み [5]

  • EV生産台数(2025年):約2,000万台(世界)

  • 単位あたり銀使用量:平均30グラム/台

  • EV由来の追加需要:約600メトリックトン

長期成長予測:

  • 2023-2031年の成長率(CAGR):15.1%(銅・銀コンポーネント) [6]

  • EVの普及加速に伴い、銀需要は構造的に増加

技術的優位性

銀の高い導電性と延性により、EVはより効率的な電気接続を実現しています。軽量でありながら強力な電気接続が、バッテリーと他の車載コンポーネント間で確立されます。

その他の工業用途

ろう付け合金

  • 2024年:前年比3%増

  • 主要産業:自動車産業、航空宇宙産業

  • 構造的な需要増加が継続

その他工業用途

  • 2024年:前年比4%増 [7]

  • AI関連アプリケーションからの需要増加も寄与

エチレンオキシド(EO)触媒

  • 2024年:やや減少傾向

  • 他の工業用途の成長により相対的シェアが低下

2024年工業需要の総括

総工業需要

680.5百万オンス(前年比4%増) [8] [9]

  • 4年連続で過去最高を更新

  • グリーンエコノミーが構造的成長を支える主要要因

主要成長ドライバー

  1. 太陽光発電(PV):232百万オンス(全体の19%) [10]

    • 2022年比で96%増加

    • 2023年比で20%増加

  2. 車両電動化(EV等):88-90百万オンス(2025年予測) [11]

    • 自動車セクター全体として記録的水準

  3. グリッドインフラ:送電網の近代化・拡張

    • スマートグリッド構築

    • 再生可能エネルギー統合

  4. AI関連アプリケーション:新興需要分野

    • AIサーバーファームは従来の2-3倍の銀を使用

    • 2030年までに追加23 Mozの需要見込み

市場供給バランス

年度

市場状況

供給不足量

2024年

4年連続の供給不足

148.9百万オンス

2025年(予測)

供給不足継続

117.6百万オンス(4年ぶりの低水準)

最新動向(2025年)

産業需要の見通し

2024年まで記録的な成長を続けた工業需要ですが、2025年については以下の動向が予測されています:

横ばい傾向:

  • 2025年の工業需要は概ね横ばいと予測

  • PV需要の成長鈍化が主因

  • ただし、構造的な供給不足は継続

供給不足の緩和:

  • 2025年の供給不足は117.6百万オンスと予測 [12]

  • 2024年の148.9百万オンスから縮小

  • 4年間で最小の供給不足水準

グリーンエコノミーの影響

長期的な構造的成長:

グリーンエコノミーへの移行は、銀需要の構造的な成長ドライバーとして確立されています。

  1. 再生可能エネルギー:太陽光発電容量の継続的拡大

  2. 電気自動車:EV普及率の上昇と充電インフラの拡張

  3. グリッドインフラ:スマートグリッド・送電網の近代化

  4. AI・半導体:新興技術分野での需要増加

市場構造の変化

2014年から2024年の変化:

  • PVセクターのシェア:5% → 19%

  • 最も動的な需要ドライバーに成長

  • 2030年予測:米国の太陽光発電が石炭火力を上回る見込み

    • 必要銀量:年間300百万オンス(米国のみ)

技術革新の影響

TOPCon技術の普及:

  • 2024年に200百万オンスの需要を創出 [13]

  • 従来型パネル比で50%多い銀使用量

  • 効率向上と銀使用量増加のトレードオフ

将来的な削減技術:

  • 銀ペースト技術の改良

  • 代替材料の研究開発

  • ただし、短期的には絶対需要の増加が継続

まとめ

工業需要は、グリーンエコノミーへの世界的な移行により、構造的な成長局面にあります。特に太陽光パネルと電気自動車が主要な成長ドライバーとなっており、2024年には4年連続で過去最高の680.5百万オンスを記録しました。 [14]

2025年は成長鈍化が予測されるものの、長期的には再生可能エネルギー、電気自動車、グリッドインフラ、AI関連アプリケーションなどの分野で、継続的な需要増加が見込まれます。市場は供給不足が続いており、銀価格の上昇圧力となる可能性があります。

参考文献・データソース